課題2:陽子の中のクォークとグルーオンの分布

home:準備 (linux | editor | X window | ROOT | login | remote ROOT | Geant4) , 課題(1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6)updated 2011.11.25a

[1] 概要

  • 陽子はクォークとグルーオンの集合から成り立っている。陽子の持つ運動量全体を1.0とすると、そのうちのxという運動量割合を持つパートンの確率を u(x) などと書く。6種類のクォークとその反クォークとグルーオン(反グルーオンはない)がありそれらの運動量割合分布を以下のようにあらわす:
    u(x),ubar(x)	up quarkと反up quarkの分布
    d(x),dbar(x)	down quarkと反down quarkの分布
    s(x),sbar(x)	strange quarkと反strange quarkの分布
    c(x),cbar(x)	charm quarkと反charm quarkの分布
    b(x),bbar(x)	bottom quarkと反bottom quarkの分布
    g(x)        	gluonの分布
    
  • 量子色力学(QCD)によると、反応における運動量転移(Q2 GeV2で表す)の大きさによってクォークやグルーオンの分布(PDF, Parton Distribution Function)が変わる。反応が高エネルギーになるほどより多くのクォーク・グルーオンに分かれる。これらはDGLAP発展方程式(概説)に従うので、低いエネルギーで測ったクォーク・グルーオン分布をLHCの高いエネルギーまで外挿することが出来る。

    [2] PDF:クォーク・グルーオンの分布関数

    1. Durham大DatabasesのPDFページを開くと、オンラインでクォークやグルーオンの運動量割合分布を計算できる。例えばこの様にセットするとQ2=1000 GeV2での分布図が得られる。MRST(MSTW)は現在使われている代表的なPDFの一つである。

    2. 上記のページをこの様にセットしてMake the PlotをクリックするとPDFの数値がテキスト形式で右欄に出る。画面から表がコピーできる。

    3. LHC実験でヒッグスなどの重い粒子を作る場合の Q2~MH2~10,000(GeV)2 である。比較のためにQ2 = 100 と10,000 GeV2値でのPDFを取得して、"MSTW_100.txt, MSTW_10000.txtのtextファイルを作る。一行目のみに項目を書いて(読み込むときに一行分空読みする)おくとあとで便利である。

    4. ROOTマクロ(plot_pdf.C)で読み込んで Q2 = 100 と10,000 GeV2の分布の比較プロットを作成する。右図のようにx分布が相当変わっていることがわかる。これがいわゆるQCD evolutionである。
    5. 提出課題2:Q2=10000 GeV2で2つのPDF分布 MRST(MSTW)とCTEQ6を比較するプロットを作る。
    6. ここでプロットした値は xf(x) で f(x) はパートンがxの運動量成分を持つ確率である。したがってxf(x)をxで0から1まで積分すると、各パートンが持つ運動量成分の総計がでる。MSTWを使うと
      Q2gluonupupbardowndbarstrangecharmbottomsum
      1000.5920.2530.0380.1240.0420.0270.0120.0051.093
      100000.5770.2170.0400.1110.0440.0310.0190.0131.051
      となる。なぜ合計が1以上になるのかしら?(陣内先生からの情報)W生成の断面積などの分布を実験とあわせるために、合計が1.0を越えるPDFも存在する。