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アトラス物理ワークショップ@アテネ(2003.5.21-25):出席者によるメモ欄

2003.06.17 (T. Kondo):
アトラス日本物理グループアテネ日本語メモ
  • アトラス物理ワークショップ@アテネ, Greece
  • Agenda
  • 日本人による発表
  • 参加者による日本語メモ:
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       ワークショップ概要メモ         神前  
      5.21 09:00->11:30 Opening session       田中純
      5.21 12:00->16:15 inner detector/flavour tagging        田中礼
      5.21 17:00->19:00 Electron/gamma        尾高
      5.22 09:00->11:00 Muons                 神前 
      5.22 11:45->15:30 Jet/ETmiss/taus       神前 
      5.22 15:30->16:10 Heavy Ions            岩田 
      5.22 16:10->16:30 Forward physics       田中純
      5.22 17:00->18:30 Standard Model        神前
      5.23 09:00->11:00 B-physics             尾高
      5.23 11:30->13:00 Top physics           川越
      5.23 14:00->17:00 Higgs                 神前
      5.23 17:00->21:00 Excursion             岩田
      5.24 09:00->11:15 SUSY                  田中純
      5.24 11:45->13:20 Exotics               田中礼
      5.24 04:30->19:00 Commissioning         尾高
      5.24 21:00->23:30 Social dinner         川越
      5.25 09:30->12:20 What else ... ?       田中礼
      5.25 12:20->13:00 Conclusions           岩田
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    ワークショップ概要 メモ(神前)

    件名 : [atlas-japan:00497] [Athens] Physics workshop 概要 送信日時 : 2003年 5月 27日 火曜日 11:55 AM 差出人 : Junichi Kanzaki 宛先 :atlas-japan@ml.post.kek.jp 皆様 5月21日(水)から26日(日)までアテネで行われた第4回 ATLAS Physics Workshop に参加させていただきました。日本グループからは 岩田(広島大)、尾高(KEK)、川越(神戸大)、田中(礼)(岡山大)、 田中(純)(東大・ICEPP)、神前(KEK) の6名が参加しました。また 田中(礼) Higgs 川越 SUSY 田中(純) Exotic の3名の方の発表が各セッションでありました。本当にご苦労さまでした。各 セッションの様子については参加された方々から報告がありますので、ここで は全体の様子を簡単に紹介させていただきます。 全体の参加人数は200名を越えていたようです。グループミーティングでもこ の規模になると運営は大変だと思われます。今回はかなりの部分を業者に依頼 して運営されていました。ホテルなどの宿泊の手配だけではなくホテルと会場 の送迎、コーヒーブレークや昼食(会場のロビーでビュッフェスタイルで行わ れました)、excursion と banquet など物理のセッション以外のほとんどの部 分が業者の方によって運営されていたようです。 アテネ大学の会場はアテネ市郊外で朝、夕のバスによる送迎で参加者のほとん どのみなさんは移動していました。毎日、朝9時から夕方7時までのセッション の連続で全体としてはかなりハードなスケジュールだったと思います。 Fabiola も最後のまとめでやり方を変えた方が良いかも、と触れていました。 会場の備え付けのプロジェクターが写りが悪かったり(二日目からは持ち運び できるタイプのものを置いて使っていました)、最終日、あと少しと言うとこ ろで停電があったり、準備はなかなか大変ですね。 Lund で行われた第3回 workshop から約1年半ですが、その間、私達日本グルー プの Higgs 物理を中心として検討作業もかなり進むようになったと思います。 発表の数は前回と同じですが発表ができなかったテーマについても、我々の作 業の結果が参照されていることを見ても内容的には進歩があったのではないか と思います。もちろん満足行くレベルとはまだまだ言えませんが。 会議全体の様子としては data challenge でのデータ作成と絡み、full simulation データを用いた、より精密な detector performance study が多 く見られ、また本番の data taking へ向けての commissioning の議論なども あり、いよいよ本番へ向けての動きが始まった感を強くしました。我々のこれ からの活動についても本番を視野に入れた方針を立てて行く事が必要となって 来る事でしょう。 KEK 神前 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Higgs メモ(神前) 件名 : [atlas-japan:00505] [Athens] Higgs 送信日時 : 2003年 5月 30日 金曜日 6:05 PM 差出人 : Junichi Kanzaki 宛先 : アテネのワークショップでの Higgs のセッションの様子についての報告です。 Higgs のセッションの講演は合計11、そのうち二つは convenor によるもので すので、実質9となります。誰がどのような講演をするかについてはほとんど convenor の手によって決められたと言って良いと思います。5月12日に行われ た直前の Higgs meeting で講演者について発表がありましたが、日本グルー プからは岡山大の田中(礼)氏が一人、Wisconsin 大から一人で、最近のメジャー な解析活動を行っている両グループから計二人しか選ばれず、他のほとんどが ヨーロッパのグループから選ばれた事で、ワークショップ前後に Wisconsin の研究者と話しましたがかなりストレスが溜っているようでした(もちろん我々 も、、、)。 このセッションの紹介は、まず何と言っても岡山の田中(礼)氏の御努力への感 謝から始めなければなりません。もちろん国際会議での経験も豊かな同氏です から発表の内容については非常にレベルの高いのは当然の事ですが、大学での 激務の合間をぬってのミーティング参加、および発表の準備などをこなされて 来た事に大変感謝いたします。 セッションはまず Elzbieta (Richter-Was: convenor の一人) による Lund workshop 以降の working group の活動のまとめから始まりました。 続いて ttH 関連の講演が二つ。一つは H->bb の崩壊モードについて Bonn の Jochen (Cammin) が、その他の H->WW および tau tau について田中氏が話し ました。Jochen の話の中では東大の片岡君の仕事についても触れられていま した。このモードはやはり難しい。CMS と比較して悪く見えるがきちんと条件 をそろえて比較するとほとんど変わらないと言っていました。どう見てもこの モードでの Higgs の発見は少なくとも容易ではないようです。やはりこのモー ドの重要性は田中氏の講演にもあるように top Yukawa coupling の測定、と いう観点からの解析にあると考えられます。 続いて vector boson fusion の summary を Bruce (Mellado; Wisconsin)が 行いました。日本グループの大きな contribution である Higgs -> tau-tau -> lepton + hadron、H -> gamma gamma、H -> b b 等についてもちゃんと refer されていました(事前に meeting の際に打合せを行いました)。 次に Unal 氏(first name を知らない)が H-> gamma gamma の inclusive か ら + N-jet tag という括りで話しました。個人的にはこのようにまとめて (inclusive も VBF も)話す事にどのような意味があるのか理解できないので すが Elzbieta が従来から拘っていたテーマだったようです。 続いて H->ZZ* -> 4 mu についての解析を DC1 の full simulation data を 使ってやってみた、と言う話し (Rosy Nikolaidou; Saclay)。見た所、これま での所は内容的に Physics TDR と同じ範囲のようでした。Plan として semi-leptonic decay からの mu の rejection に impact parameter を使う、 というのがありましたが、、、 次に Faibo (Cerutti; convenor) が Higgs discovery potential のまとめを しました。ただどうもいろいろの tool が気になって仕方がないようで、 neural net や liklihood などでここまで良くなる、と言ってましたが、まだ どれも確定した結果ではありません。前 convenor の Karl (Jakobs) とは違っ て彼はこのような tool を使うのに、ほとんど抵抗感はないようです。(世界 で誰も見た事がない粒子を見付けるのに neural net で初めて見えました、と 言うつもりかな?) SM Higgs の最後に Michael (Duehrssen; Freiburg)が Higgs の結合定数測定 のまとめと、H->ZZ->4l での spin および CP 測定(近藤先生、頑張ってくだ さい)について話しました。 セッション最後三つの講演は MSSM Higgs 関連のものです。最初は Markus (Schumacher; Bonn 二人目)が MSSM parameter scan のまとめを話しました。 いろいろのscenario で limit のパターンが変わると言うのを visual に、、、 ただもともとややこしいものですから(Markus の話しは良くまとまっていたと 思いますが)、まとめて話すのも、そして聞くのも大変です。 次に Mireia (Dosil; Barcelona) による MSSM での H-> tau tau モードの解 析のまとめです。これまでの作業の総まとめの話でした。 最後に invisible Higgs の話(Pauline Gagnon; Indiana)。Vector boson fusion だけでなく ZH (難しい)、ttH (study が必要)などのチャンネルの話 も出て来ましたが trigger について全く mention されていないのは不満。 以上、それぞれの講演の詳細については是非 http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a031081#s8 を御参照ください。 日本グループからの講演は一つだけでしたが、前回の Lund での workshop の 時とくらべ refer されている我々の仕事の量は圧倒的に増えています。もち ろん更なる努力は必要と認識していますが、Higgs working group 内である程 度の認知度を得ていると考えています。 KEK 神前 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Standard Model メモ(神前) From Junichi.Kanzaki Date: Thu, 29 May 2003 18:21:39 +0900 To: atlas-japan Subject: [atlas-japan:00499] {Athens] Standard Model physics アテネのワークショップでの Standard Mode Physics のセッションの様子に ついての報告です。 最初に Matt Dobbs 君が introduction を行いました。強調していたのは特に data taking 初期の段階での standard model physics の重要性でした。ごもっ とも、、、後、workshop で紹介された以外の解析状況について紹介がありま した。KEK の尾高氏の活動も紹介されていました(Matt によればトラペ一枚に するのに苦労した、、、)。 続いて minimum bias events や underlying event についての講演でした。 まず始めの introduction が分かりやすかったと思います。初心者の方は参考 にされると良いのではないでしょうか。また、知らなかったのですが http://jetweb.hep.ucl.ac.uk/ という所に UA5 や CDF の data が公開されているのですね。この公開 data を用いて pythia の parameter tuning を行っています。とても参考になりま した。 次は pdf についての話ですが、これは一般的な議論についての話でした。 そして WW scattering の semi-leptonic mode での observation の話。 (leptonic mode は Matt の introduction にありました)これは electroweak symmetry breaking に重要な WL WL scattering についての測定の話(light Higgs がないと言う場合だってあるかもしれないし、、、)。Jet algorithm の議論などが比較的具体的に議論されていた気がします。kt algorithm が用 いられていて参考になります。 最後は wavelet analysis だそうで、、、うーん、私には理解不能でした。ト ラペを見てください。 KEK 神前 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- B Physicsメモ(尾高)

    件名 : [atlas-japan:00504] [Athens] B Physics 送信日時 : 2003年 5月 30日 金曜日 5:58 PM 差出人 : odaka 宛先 :Atlas-Japan 三日目(5/23)の最初に行われた「B Physics セッション」の報告です。 B Physics は最初の low luminosity の時が勝負なので、測定器の staging の影 響をまともに受けてしまいます。その影響がどの程度のものなのかの評価が最重要 課題。DC1 のデータなどを使って、TDR/DC1/Initial という三種類の測定器 layout で解析を行い、最新のソフトの validation を行うと共に、それを使って最 も重要な commissioning 時の性能評価を行う、というのが主な話でした。trigger rate は最新の現実的な評価では高すぎるので低くする工夫が必要。 定量な inner detector の性能評価は最後にまとめられ、TDR layout から DC1 layout への変更(beam pipe 径の増加など)の影響はかなり大きいが、DC1 から Initial への変更(一部測定器の staging)の影響は顕著でないということのようで す。ともかく B Physics は外的変化(他の実験(B factory, Tevatron)の結果や 理論の進歩、Atlas 測定器の layout 変更)の影響を受けやすいので、柔軟に対応 していこうという話も有りました。 個別の物理プロセスの話としては、B -> K* gamma、B_c study、B_s oscillation、 B_s -> J/psi phi、B -> mu mu X (rare decay) の話がありました。これらの中でも layout 変更の影響評価が行われていました。B_c study では PYTHIA が B_c を作 るのを待っていると仕事にならないので、b -> B_c まで入れた generator を作った ということです。 以上 尾高 @ Les Houches ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Muon メモ(神前)

    From Junichi.Kanzaki Fri May 30 06:36:47 2003 To: atlas-japan@ml.post.kek.jp Subject: [atlas-japan:00500] [Athens] Muon アテネのワークショップでの Muon のセッションの様子についての報告です。 素人との目から見たまとめとしては ・順調に進んでいるビームテスト ・混沌としているソフトウェア整備状況 となります。 より詳細なそして正確な内容については agenda のページ http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a031081#s3 を御参照ください。 全部で8つの講演がありました。最初に Laporte(Saclay)氏の Introduction の後、一つだけ beamtest の紹介がありましたが、後は trigger study など を含む commissioning へ向けての準備状況の紹介と言って良いと思います。 一つが trigger とその simulation、続いて二つ(!)解析ソフトの紹介、続い て calorimter を用いた low pt mu の解析、最後に二つ Higgs の解析に関係 した講演がありました。 ビームテストについては日本からも TGC のグループが参加されているのでご 存知の方が多いかと思います。今回は主に2002年の結果が紹介されていました。 測定器およびその alignment についての理解が深まった事が強調されていま した。 さて理解が難しいのが software の整備状況です。Commissioning にむけて trigger の study にしても track を用いた alignment についての study に しても解析 software は必須のはずです。しかも素人が見たところによると結 局は: ・Muon system で local に track を作る - 測定点を拾って track segment を作り、つなぎ合わせて fitting する ・ID の track とつなぐ ・Global fitting を行って全体の精度を挙げる と言った手順だと思えますが、現在、解析の software については二つの流れ があるようです。 ・Saclay を中心とした Muonbox + STACO (Fortran -> Fortran90) ・対して Moore + MuID (C++) ICEPPの田中(純)氏によれば software のミーティングでは Muonbox での結果 がほとんど、との事でしたが、果して将来にわたって Fortran90 という free でないものを使う事になるのか疑問が残ります。(どなたかこの辺の事情につ いて詳しい方がいらっしゃったら御紹介をお願いします) Higgs に関しての講演については一つは full simulation の結果を使っ てやってみました、というものでしたが、最後の講演は alignment の error が Higgs の解析に与える影響を見たもので、せっかく full simulation のデー タを使うのであれば、このように fast simulation ではなかなかやりにくい 事をやるのが意味があると感じました。 KEK 神前 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Jet/ETmiss/taus メモ(神前)

    Date: Thu, 29 May 2003 18:19:57 +0900 From: Junichi Kanzaki To: atlas-japan Subject: [atlas-japan:00498] {Athens] Jet ETmiss tau アテネのワークショップでの Jet/ETmiss/taus のセッションの様子について の報告です。 主に hadron activity についてのセッションです。他の detector performance のセッション同様、Introduction のあと最初に beam test につ いての報告があり、次に trigger および tau ID についての講演がありまし た。 物理と関連して興味深かったのは full simulation data を用いた tau ID の 結果の紹介でした。TDR の結果をさらに optimize したものや、likelihood を用いた結果も紹介されていましたが、概して TDR の結果より良い結果が得 られていました。 続いて Jet algorithms についての講演がありました。比較的初歩的な所から の説明があり、初心の者にとって役にたつ話だったと思います。例によって cone algorithm と kt algorithm が紹介され、理論的には kt algorithm の 方が整合性がとれるのだが calibration がむずかしいとされていました。ま た kt algorithm は noise に弱い(noise の影響で jet multiplicity が大き く変わる)とされていましたが、素人目にはもうすこし違った扱い方もあるの では、という印象でした。さらに続いて calibration についての話がありま したがそこでも同様の比較があり、ただしやはり kt algorithm の場合には noise に対する cut がなにもないような比較で、それはちょっと fair でな いのではないか、というのが印象でした。一体どのような条件で比較している か不明、、、 次が Etmiss の測定についてですが現在ではまだ simulation data を用いた noise の影響のチェックなどの段階のようです。 最後が energy flow についてです。物理の結果に結び付く非常に重要な量で ある訳ですが、現在では DC1 full simulation のデータを使った簡単な結果 が紹介されたのみでした。今後、いろいろの発展があるはずですので注目して 行くべき activity だと思います KEK 神前 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Electron/Gamma メモ(尾高)

    件名 : [atlas-japan:00503] [Athens] Electron/Gamma 送信日時 : 2003年 5月 30日 金曜日 4:46 PM 差出人 : odaka 宛先 :Atlas-Japan 5/21(一日目)の最後に行われた「Electron/Gamma セッション」の報告です。 EM calorimeter と inner tracker を使った electron/gamma ID を study する グループの報告です。H8 での EM cal の beam test の報告、trigger rate の 最新の評価、DC1 データを使った simulation の解析結果の報告など。だんだん 現実的になって、予想性能は昔の評価よりも多少悪くなり、trigger rate は TDR よりもかなり高くなるとのこと。まあそんなもんでしょう。 解析の方は新しい試みも行われている様です。track から追っていって low-pt electron を ID しようという話と、gamma conversion を reconstruct する話が 報告された。r = 40 cm 以下で convert した gamma の 70% は reconstruct で きるらしい。物質量は元々多いし、これからも多くなることはあっても少なくなる ことは無いはずなので、これは大事な仕事だと思います。reconstruct された gamma の方向の精度はかなり良いはずなので、これを積極的に解析に使う手が有る のではでしょうか? beam test の結果: ・energy resolution は 10%/sqrt(E(GeV)) くらいで、これは何をやってもこんなも んでしょう。 ・constant term は global non-uniformity 0.6%、global constant term 0.65% とのことですが、これらの意味は? ・position resolution は strip を使うと 2.1 mm/sqrt(E(GeV)) (barrel)、2.5 mm/sqer(E(GeV)) (endcap)。 ・muon response は 291 MeV で noise は 41 MeV。分布はきれいに分かれて見える 。 ・shower shape を使った gamma/pi0 separation (pi0 rejection factor?) は、 gamma eff. = 90% で data は 2.6 で MC は 2.8。良く合っているということでし ょうね。 以上 尾高 @ Les Houches ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Commissioning メモ(尾高)

    件名 : [atlas-japan:00506] [Athens] Commissioning with "physics" data 送信日時 : 2003年 5月 31日 土曜日 2:24 AM 差出人 : odaka 宛先 :Atlas-Japan 「Commissioning with "physics" data セッション」の報告です。 最終日前日の午後いっぱい(14:30 - 17:00)行われ、Peter Jenni 自ら chairman を務めていました。 「Commissioning」とは、各測定器のインストールから実験開始を経て定常的なラ ンに移るまでの過程のことです。その手順を整理し、必要な物があれば今から準備 しておこうという話が進んでいます。各測定器はインストールに並行して動作チェ ックやタイミング合わせ、キャリブレーションを行います。これらは最初は測定器 ごとに行われますが、ある時点で全体を統合して動かしてみる必要があります。現 在の案はそれを 2006 年 8 月と設定しています。ここで full detector での cosmic-ray run を行う。その後 12 月に beam line が封鎖され、2007 年 4 月か ら 5 月にかけて single beam での運転が行われ、first collision という予定に なっているようです。cosmic ray や single-beam run の際の beam halo、 beam-gas interaction の simulation を行って、それぞれの時点で何ができるのか を考える材料を提供するというのも物理グループに課せられた課題のようです。 talk は CDF Run II と H1 の経験談から始まって、Atlas 全体の予定、cosmic ray, beam halo/beam-gas の simulation の話、coffee break を挟んで trigger を含む各 detector performance グループの戦略紹介が続き、最後に物理の戦略と いう順番でした。物理解析戦略の話は最後にあったのですが、物理グループとして は一番興味のあることなので最初に書いてしまいます。Fabiora が "very preliminary idea" と断って話しました。彼女は物理の対象を Goal#1 から #3 の三 つに整理していました。Goal#1 は QCD jets, W/Z, Drell-Yan, t-tbar などの "standard process"。これらは測定器の calibration や性能評価にも大切な物で す。Goal#2 は "road to discovery"。Higgs 発見などに不可欠な b-ID などに絡 んだ物。B lifetime 測定など。Goal#3 は "new physics"。SUSY で squark, gluino 絡みのものや large extra-dimension の一部は一瞬で勝負がついてしまう はずです。測定の systematic error は 10 - 20% (lumi. error が 10% 程度)。 E_jet uncertainty が 10% くらいあるだろうから top mass の精度は 5 - 7 GeV だろう、というような予想もしていました。日本グループもそろそろこの辺をまじ めに考える必要がありますね。 Introduction の後に CDF Run II (Tevatron) と H1 (HERA) の経験についての話が ありました。CDF は silicon detector や trigger、offline/data taking に問題が 出たが、その都度 task force を作って集中的に問題解決にあたって乗り切った 。COT (central tracker) が問題なく動いたのが大きかった。collision 開始後は 物理データ(W, Z, J/psi, gamma+jet, D0, Upsilon, gamma conversion など)を 見ることが大事。H1 は 1994 年にやっとまともな DIS (Deep Inelastic Scattering) data が見え始めた。それまでは beam background と coherent electronics noise に悩まされた。beam background trigger は calorimeter の timing の違いで除けるようになった、というような話でした。 Cosmic ray の simulation は、hall への shaft(竪穴)の効果などを入れて詳細 に行われている。shaft を通ってきた比較的 soft な成分と、他の部分を通り抜け てきた hard な成分の二成分がある。Energy spectrum は、soft 成分が 10 - 20 GeV に peak を持ち、100 GeV 付近で hard 成分に移行する。|z| < 60 cm, |r| < 20 cm を通るもので約 0.5 Hz。calorimeter の calibration にも使える。勿論、主 な用途は Silicon を含む barrel 部分の tracker の calibration でしょう 。single-beam run は 2 か月くらい続くので、これの beam halo や beam-gas interaction からの粒子を calibration に使えないかということで、その simulation もしている。interaction point から 23 m 以上離れた所での反応から 来るものを beam halo、それより内側での反応から来るものを beam-gas と定義。 nominal value の 1/200 の beam current での評価。beam halo は endcap muon で 136 Hz。timing がちょっと違うのでその辺の調整をどうするか。beam-gas は FCAL の calibration に使えるか?single-beam run では危険なので inner tracker は on にできるはずがありませんから、silicon は関係ない話ですね。これ らの simulation 結果は Web Page (Physics から link あり) から download でき るそうです。 この後、各 detector performance グループの話が続いたのですが、書いているとキ リがありませんので割愛します。興味のある人はトラペンを見てください 。trigger は RPC の timing を変えられるようにするなどの cosmic ray, beam halo/beam-gas への対応を考えている様です。 以上 尾高 @ Les Houches ----------------------------TOPへ戻る------------------------- heavy ion メモ(岩田)

    件名 : [atlas-japan:00507] [Athens] Heavy Ion 送信日時 : 2003年 6月 1日 日曜日 4:49 PM 差出人 : Y-iwata 宛先 : 第4回 ATLAS Physics Workshopの重イオンセッション(5月22日)の報告です。 広島大学 岩田 重イオンセッションでは2つの発表があった。後発組みの重イオンはこれからT DRを作るらしい。 LHCにおいてPb + Pb の重イオン衝突を2.75TeV、最大ルミノシティー 10の27乗でやる。2007年にテストがあり、2008年に1インバースn bのランがある。 1) Heavy Ion Physics with the ATLAS Detector という話をポーランドのバーバラというひとがやった。LHCでQGPの定量的 な研究をやりたいが、ATLASは高PTの測定精度が高い、ミューオンスペク トロメータのアクセプタンスが大きい、Siトラッカーの分解能が良いので使用 できる。重イオンのイベントジェネレータHIJINGを使ってオキュパンシ ー、マルチプリシティーなどのシミューレーションをした。Siストリップ検出 器はなんと20%近くのオキュパンシーになる。でもトラッキングはできる。 Quarkoniumサプレッションも測れる。それで、まとめは「ATLASで重イオン の低PT現象が測れるようだ。高PT現象も測れるかどうか調べましょう。」 え? はじめに高PTの精度がよいからATLASと言ったんじゃないの? 2) Jet Quenching in Heavy Ion Collisions ブルックヘブンのAssamaganが発表した。やはり重イオンのイベントジェネレー タHIJINGを使った。pp衝突のジェットのイベントとPb Pb衝突のイ ベントを混ぜたものからppのジェットを再構成できた。PbとPbの正面衝突 で40GeV以上のジェットを再構成できる。但し、そのさい38%がフェイク である。100GeVになるとフェイクは無い。ATLASでJet Quenchingを 測定することが出来る。何故これでJet Quenchingを測定することが出来ると言 えるのか私には解らない。 いずれも重イオン衝突のイベントのシミュレーションに終始して物理の内容が 乏しかったように思う。重イオン衝突は、陽子陽子や陽子反陽子衝突の根本的で しかも多彩な物理と比較して、得られるものが少ないように思う。以前から感じ ている事だが。 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- excursuin メモ(岩田)

    件名 : [atlas-japan:00508] [Athens] Excursion 送信日時 : 2003年 6月 1日 日曜日 4:53 PM 差出人 : Y-iwata 宛先 : 第4回 ATLAS Physics Workshopの遠足(5月23日)の報告です。 広島大学 岩田 アテネからバスで1時間余り走ってCape Sounionという岬に行った。この岬で はギリシャ特有の柱の並んだ神殿遺跡が海を見下ろしている。日本人はこういう ものを神殿と呼ぶのが普通のようだが標識にはtempleと書いてあった。今回のワ ークショップが超過蜜であったのでエクスカーションも午後5時から10時であ った。会の世話人の人はこのようなハードスケジュールも旅行代理店をうまく使 って上手にこなしていることに感心した。 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- conclusions メモ(岩田)

    件名 : [atlas-japan:00509] [Athens] Conclusions 送信日時 : 2003年 6月 1日 日曜日 4:58 PM 差出人 : Y-iwata 宛先 : 第4回 ATLAS Physics Workshopのconclusionsセッション(5月25日)の報告です。 広島大学 岩田 1) S. Haywoodが皆さんATLAS Scientific Noteをこぞって書きましょう と一言話した。別にconclusionとは関係の無い事だが、他のどのセッションにも ふさわしくないのでここで話したのだろう。 2) Fabiola Gianotti お決まりの閉会の挨拶をしたが、それは省略。それ以外では、今回のワークシ ョップはあまりにも過密でハードスケジュールであった。次からはやり方を変え ねばいけないだろうと語った。 DC2の1部分としてニューフィジックスの次のようなシミュレーションを提案 した。この先2、3週間内にATLFASTで試験的にやってみて、その結果を 評価して、続けるべきであれば10月頃までにチームを作ってもっと大規模にや ってリリーズする。そこでもっと詳しくやるべきであれば、フルシミュレーショ ンでDC2をやる。 3) Peter Jenni この会で細部にわたるATLASの物理の検討が進んだ。以前の楽観的な予想のよ うには行かないことも一部(B物理など)で判ったが努力で解決できるだろう。 というような抽象的でお決まりの挨拶をした後、これから実験開始までの予定の 紹介、秘書や世話人、Fabiolaを称えて花束贈呈をした。主な予定は、2006 年8月までにLHCの双極電磁石、ATLAS検出器は出来て、その後10月までATLAS 全体のコミッショニング、10月から12月まで宇宙線でのテスト、2006年 末にはATLASはビーム待ちの状態。 4) 会の世話人代表でアテネ大学のChristine Kourkoumelisがお決まりの挨拶 をした。この人はほんとに上手に会を運営したと思う。感謝! ----------------------------TOPへ戻る------------------------- Forward physicsメモ(田中純)

    件名 : [atlas-japan:00521] [Athens] Forward physics 送信日時 : 2003年 6月 10日 火曜日 4:34 AM 差出人 : jtanaka 宛先 : 5/22 木曜日(二日目)のForward physicsのレポートです。 トラペは http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a031081#s16 からアクセスできます。 その前に訂正([atlas-japan:00520] [Athens] Opening session) [Opening session] 4/21 水曜日(一日目)のOpening sessionのレポートです。 --> 5/21 でした。 トークは一つだけで、Rijssenbeekという方が行ないました。 内容はLuminosity MeasurementとForward Physicsの二つ。 Luminosityは約2%で測定することが目標で、Coulomb Normalization という方法を使って達成する予定である。 LUCIDという名前のLuminosity Monitorを設置する。 良く分かっている物理シグナルでも測定する予定で、 mu-pairとW/Zを使う。 Forward Physicsとしては、Diffractive physicsというものを 考えているようで、Diffractionの仕方(?)によってイベントの 特徴が異なることを見せていた。 ----------------------------TOPへ戻る------------------------- SUSYメモ(田中純)

    件名 : [atlas-japan:00522] [Athens] SUSY 送信日時 : 2003年 6月 10日 火曜日 4:35 AM 差出人 : jtanaka 宛先 : 5/24 土曜日(四日目)のSUSYのレポートです。 トラペは http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a031081#s10 からアクセスできます。 7つのトークがありましたが、Full Simulationでのスタディが 結構報告されました。SUSYグループは早くからFull Simulationに 関わっているグループの一つです。 (1) Polesello 総括。SUSYに関する精密測定は別として、SUSYがあるかどうかに関しては 統計は十分あるので、結局は検出器のスタディがキーとなる。 (2) Paige SUSYグループがFull Simulationで行なったことのまとめ。 SUSYはパラメータがたくさんあるので、生成したデータのパラメータ設定。 100k events生成、これは、彼らが2008年に取れると見込んでいる5/fbの データ相当らしい。Back GroundはFast Simulation(統計的に無理 & 生成しても無駄)。 Full Simulationの結果は、MC Truthとの対応でPIDを行ない、 それを用いて分布を作成したようで、PID等の道具はまだ使っていない。 競合ソフトは2つも動かした。ROOTではなくPAWを使った。その他の苦労や苦情。 (3,4) Costanzo & Tovey (2)で生成したデータで得た分布をたくさん見せ、問題点を指摘。 例えば、 - eta=1.1でelectron fakeが変。 - tau-jetはNoiseを入れると性能がかなり悪くなる。 - 3D b-taggingの性能分布-->TDRより随分悪い。 - eta=2.5,3.2,~5でjetに問題あり。 - Cone vs Kt アルゴリズムの比較。 --> KtはNoise/Pile-upが入ると全く駄目。 - Missing Etに+15GeV程度のシフトがある。 (5) Duchovni Inclusive searchに関する新しいアルゴリズムの紹介。 本当に新しいアイデア? (6) Lytken mSugmaでのDirect Slepton生成の話。 sチャンネルでSlepton pairが生成され、その崩壊が LRで異なって、RはLSPのみLはLSPだけでなく2番目に軽い ニュートラリーノやチャージーノにも崩壊(パラメータ依存)。 Intermediate tanBeta(プレゼンでは10)に対しては100/fbで質量が 300GeVなら発見可能。SPS1では、Lの質量は~4GeV程度で決められるが Rは困難。SPS1とは、SUSY業界では当たり前らしいですが、Snowmassで SUSY屋さんが決めたSUSY Parameter設定のひとつです。 前にも述べましたが、SUSYにはパラメータがたくさんあるので とりあえず重要そうないくつかの設定を理論屋さんが話合いで決めて それはとりあえず調べましょう、というもの。 (7) 川越さんのトーク 第3世代のsquarkであるstop & sbottomの性質をtb質量分布から 探ろうという話。グルイーノがtop-stop or bottom-sbottomを経由して tb+チャージーノに崩壊するモードを使った研究。 多くのSUSYパラメータ設定(ここではATLAS TDRポイント)で、 end-pointとedgeの高さをスタディした。 ジェネレータもPythia、Herwigの2つを使って検証。 hep-ph/0204078,0304214にまとめ。特に後者参照。 LHCのみならずLCも含めてSUSYを検証するプロジェクトに関しても宣伝。 SUSYグループはFull Simulationでのスタディを積極的に行なっている グループだと改めて実感させられました(これがいいか悪いかは別問題)。 彼らはU.S.のグリッド環境を使うことができるようなので、それなりの パワーがあるのも事実です。