CERN(理事会:報告)

 17日、欧州合同原子核研究機関(CERN)理事会(restricted session)が開催された。

1.LHC加速器の現状について
 CERNエヴァンス教授から、パワーポイント資料により説明があった。最近、超伝導電磁石の
最初の一台がトンネルに設置されたこと、電磁石のcold massの半数以上(約600台)が完成した
こと等が報告され、加速器建設が進んでいることが報告された。一方、極低温(cryogenic)
冷却液の伝送ライン(QRL)に不具合が生じており、技術的には、欠陥箇所の装置の交換等を施し、
設置作業を加速したりすることにより当初スケジュールである2007年夏の最初の衝突実験を行う
ことが可能となるが、追加費用として40.6百万スイス・フラン(CHF)の支出が見込まれること、
さらに、追加費用として実験スケジュールを確保するために建設工事等に47.4百万CHF、
合計88百万CHFを要すること(別添御参照)、これら追加費用についてはCERN全体のマネージメントや
外部のfunding agencyの活用によって捻出する方針である旨説明があった。
 また、CERNエイマー所長から、LHCの当初計画は絶対的に尊重すべきであり、
QRL等に係る追加費用確保に向け、一層のコスト削減に取り組むこと、純粋に経済的な観点から考えても、
現段階でQRLに要する追加費用の支出を先送りすると、最大で21ヶ月の実験計画の遅延が生じる虞があり、
更なる追加費用の増大が必至であり、追加投資の逐次投入のミスを犯すことなく、今回のQRLに係る追加手当を
是非行うことを承認してほしい旨説明があった。
 さらに、QRLに関する追加費用支出について、CERN科学政策委員会委員長ピーチ教授、
同財政委員会委員長シード教授から、それぞれ技術的・財政的に妥当なものである旨検討結果が報告された。
 以上の事務局等からの説明を受け、メンバー国からQRL等に関する追加費用について、
計画の遅延はLHC計画のインパクトを損ねるものであり、CERNの科学技術界における存在
意義にも関わることから、当初計画の確保のために支出を支持する(仏。伊・スイス同旨)、
今回の追加費用の拠出は承認するが、作業進捗にあわせ、財政面での影響を慎重に考慮しながら
進めて欲しい(英。独同旨)との意見があり、本理事会として了承した。

2.LHC4実験とLCGの現状について
 CERNエンゲーレン副所長から、パワーポント資料により、各実験グループは2007年の
実験開始に向けたスケジュールで準備(例えば、ATLASはトロイダルコイル、カロリメター、
ミューオン検出器等の設置)を進めていること、LCGはEGEEと協同で100を超えるサイト、
1万台以上のCPUを繋いだ世界規模のグリッドを運用し、アメリカや北欧の別なグリッドとの
相互乗り入れも行っていること、LCGの協定書の準備が進んでいること等について説明があった。