第123回CERN理事会の概要メモ
2002.12.16 近藤
開催日:2002年12月13日(金)CERN Council Chamberにて
議長:Professor Maurice Bourquin(ジュネーブ大学教授)
http://info.web.cern.ch/info/Press/PressReleases/Releases2002/PR17.02ECouncil.html
開会宣言:
オブザーバー国(イスラエル・EU・ロシア・日本・米国など)の出席者を紹介。
William
Michel氏の死去を悼んで起立黙とうを行った。
議題2:第122回の議事録案:承認。
議題3:アジェンダの変更:議題18を7の前に、議題12を 6の前にする。
議題4:理事長による報告:
これまではCERNの財政危機問題で大変だった。外部評価委員会報告を6月に行った。LHCを2007年完成を目指す活動計画書が提出された。これがキー文書である。Audit委員会の創設を議論する。非加盟国の加盟に関する最終調査報告が出された。反水素アトムがCERNで発見確認されCERNスタッフの努力に感謝する。活動計画書に従って全てのCERNスタッフが努力しておりCERNの将来はより輝いている。2004年にCERN創設50周年記念が開かれる。
議題5:所長による現状説明:
2002年はLHCコスト増加問題で忙しかった。マンパワー計画・ベースライン計画がもし認められればCERNは再び軌道に乗る。外部評価委員会の全指摘点を考慮し計画を立てた。土木工事は完成に近い。加速器・実験装置は建設が進んでいる。インドをオブザーバー国に推薦する。反水素がAthena実験とa-trap実験でトラップ法を使って発見された。美しい実験だ。反世界のスペクトル解析の始まりだ。イゾルデは加速器が頑張ってデータ取得時間が増加した。n_TOFはバックグランドが大幅改善し物理プログラムが進んだ。コンパスは新しいドリフトチェンバーが完成した。CNGSニュートリノビームラインの2006年完成スケジュールを示した。トンネル建設が進んでいる。加速器R&DではCLIC方式で150 MV/mの加速を達成した。CLICのテスト設備CTF3は2006年に完成する。ESGARD(European Steering Group of Accelerator Development)のもとで活動している。アトラスとCMS実験現状を紹介。両実験では幾つかの心配点がある。スケジュールが厳しい。とくに組立据付の作業が大変だ。作業人員数や運搬作業が2005年にピークを迎える。ルミノシティを10倍上げるSuperLHCの物理を検討し、意義があることを確認した。しかし内部検出器が交換されなくてはならず技術開発が必要だ。運転維持覚書の署名が進んでいる。実験装置のオーバーコストに関して各国から積極的なコミットがある。計算機技術開発ではLCG-1計画が進んでおり、2003年7月に公開される。EGEE計画(Enabling Grid for e-Science in Europe)に参加する。Grid計画では欧州と米国との協力が進んでいるが、将来日本へも広がるだろう。LHC加速器の建設では、超伝導ケーブルの生産速度を回復した。ダイポールマグネットの性能が十分と証明され生産がフルスピードで開始された。会社に倒産問題は同じコストで新契約のもとで解決した。4重極マグネットもフランスの協力で量産に進んだ。ロシア・日本・米国での生産も進んでいる。ロシア・インドから追加の貢献を受けている。透明性を出すため建設現状全てをウエブに公開した。
結論として2002年は困難で苦痛を伴った年であった。結果としてプログラムの焦点を合わすことが出来て進展し、良い計画を作ることが出来た。CERNスタッフや理事会の献身的な協力に感謝する。
所長報告に対して、イタリア・ポルトガル・イギリスが賛意を表明した。
議題12:ヨーロッパ投資銀行(EIB)からの借金(資料CERN/FC/4608):
夏に予備会合を持った。EIBの反応はよく300 Mユーロの借款条件はよい。ローン額を財政委員会に示した。11月の委員会で18-0-1(賛成―反対―棄権)で認めた(ドイツが棄権)。理事会ではドイツの棄権を除いて承認。
議題6:外部評価委員会勧告に対する行動計画とスケジュール案(CERN/FC/4519/Rev.):
9月の議論をもとにタイムテーブルを作った。添付資料の表に基づいて、主な活動(組立据付のレビュー・LHCコストスケジュールのレビュー・Earned Value Managementの導入・Local Staff制度の導入などを説明した。
議題18:Independent
Audit Committeeの設立について(資料CERN/2471/Rev.):
(イギリスI. Halliday氏ワーキンググループ委員長)ワーキンググループの資料を配った。ベストを尽くした。Audit作業をするわけでないのでAuditという委員会の名前が悪い。いろいろ問題があるので反対する。
ポルトガル・ドイツ・フランス・スイス・イタリア・オーストリア・スエーデン・フィンランド・オランダ・チェコ・ノルウエー・デンマーク・スペイン・ポーランド・ギリシャ・スロバク・ハンガリー・ベルギーなどが意見を求められ、色々な意見が出された。実験的でもよいから委員会をスタートしたいとの意見が大勢であった。
結局、提案されている文書CERN/2471のdraft resolutionは反対1棄権3で理事会の承認を受けた。
議題7:TREF(3者間雇用条件フォーラム)報告(資料CERN/FC/4627):
新しいカテゴリーの“Local Staff“を導入する。雇用条件を二月までまとめ、3月に正式な提案をする。職員組合代表の発言が求められ、病院コスト/健康保険に付いてのコメントがあった。
議題8:2003-2010年人員計画(資料CERN/FC/4628):
(CERN所長)1996年の人員計画では2002年から急に下がる。CERN内の全てのグループリーダーと議論を重ねて10月にまとめた。CERNにP+M(人員費+物件費)予算制度を導入する。各部門はシーリング内で人件費と物件費の比率を最適化できる。終身雇用と期間限定雇用の比は2:1を目標にし、過渡移行期間を設ける。期間限定雇用の長さは6年限度を9年に延長する。外注と内注については外注が基本だが、特殊ケースでは内注に戻す。主にLocal Staff分によって2003年から250年人分の雇用を確保する。これらの雇用計画に従えば、高年齢に偏っていたスタッフの年齢分布が2010年には平らになる。P+M予算制度の導入は大きな変化であるがこの機会をミスしたくない。
(PSC委員長)この人員計画は文化の積極的変更だ。人員のバンプは必要だ。
(議長)検討を感謝する。3月の理事会で決定する必要がある。
(オランダ)LHC後のCERNの将来が大変であり真剣に考えるべきだ。
(フランス)P+M制度とLocal Staffの導入はよい。期間限定雇用を最高9年までにする事については保留したい。現在の給料水準は受理できない。
(CERN所長)人件費は2%増えているが約束の節約は実現している。外注努力をしている。CERNの将来に向けての努力はしているがもっとR&Dは必要だ。9月理事会にWays & Meansを提案して計りたい。
議題9:LHC建設期間の執行予算の物価指数化(資料CERN/FC/4619/Rev.):
1996年の決定に従って2%の物価上昇指数を予算ベースとしているが、CVI(Calculated Value Index)の間に格差が出た場合の処置を決定した。歳入は、従来どおり2005年まで加盟国は1%、ホスト国(フランス・スイス)は2%上昇で進む。2006年以降はCERNの購買能力を保持するように物価指数に沿うことになる。満場一致で第5章の提案を認めた。
議題10:LHCの予備費(資料CERN/2472):
2010年の予想される黒字分約140MCHFをLHC建設の予備費としたい。毎年の出費を検査しこの予備費の調節をしたい。実際の数字(140MCHF)を除いて満場一致で承認した。
議題11:2002-2010年のLHC建設と建設期間の活動と資源のベースライン(資料CERN/SPC/818/Corr.2/Rev.):
(Maiani所長)これがLHC完成に向けての集大成である。このベースラインで1996年のLHC合意を変更したい。7つの計画(科学プログラム・物件費・人件費・執行予算の物価指数・管理・物件費/人件費の指数・ヨーロッパ投資銀行からの借金)に基づいている。実験は予算限度内の執行をする。完成のためのコストを表にした。文書CERN/SPC/818の第10表が2003-2010年の全ての財政のまとめである。この計画に基づき2007年のLHC完成は確実である。
(SPC委員長)ベースライン計画を認める。CERNの潜在能力は十分使いきれていない。CERNの将来のために更なる貢献が必要だ。
(財政委員会委員長)この2003-2010年の計画を満場一致で承認した。前払いと追加の貢献を奨励する。
(フランス代表)140 MCHFの予備費は大変少ない。SPC委員長指摘のようにCERNの長期的な展望に不安をもつ。もっと他の節約法が必要で探すべきだ。
(スイス代表)提案を支持する。しかし科学活動の低下が心配だ。将来のためにもっと技術開発が必要だ。
(イタリア代表)支持する。CERNの将来を心配する。広い科学の展開を望む。
(イギリス代表)長期の展望が必要だ。ローンの支払い遅れで利子支払いが増えるのは困る。
(議長)CERNの長期の将来を心配する意見、および早期貢献と追加貢献を勧めることも含めて、満場一致で2003-2010のベースライン計画が認められた。
議題24:クローズド会合での人事関係の決定報告:
・ Robert Aymar博士(現在ITER所長)を次期CERN5年間の所長に決定した。
・ Mr Werner Zapfを人事部部長に再任( 1 May 2003 to 31 December 2003)。
・ Dr J. FeltesseをSPC委員長に1年間再任する。
・ P. Carlson・K. Rybicki・J. Stachel教授をSPCメンバーとして3年間再任。
・ M. Bourquin教授を理事会会長として1年間再任した。
・ B. Sode-Mogensen女史を財政委員会委員長として1年間再任した。
・ J. Seed博士を財政委員会副委員長に1年間再任した。
議題13:2003年CERN予算案(資料CERN/FC/4588/Rev.):満場一致で承認。
議題14:2003年の物価指数(資料CERN/FC/4570/Rev.2):満場一致で承認。
議題15:2003年予算の加盟国からの貢献額(資料CERN/FC/4630):満場一致で承認。
議題16:CERN年金(資料CERN/FC/4631,4632):棄権1(オランダ)で承認。
議題17:CERN健康保険(資料CERN/FC/4611):満場一致で承認。
議題19:非ヨーロッパ国のアソシエイト状況(資料CERN/CC/2428/Rev.):ワークンググループ報告を承認。
議題20:インドのオブザーバー国の地位(資料CERN/2472):満場一致で承認。
議題25:その他:EU、イスラエル、米国が満足を示して謝辞を表明した。
以上