件名 : [atlas-japan:01098] ATLAS Overview Week 報告[Fri, 13 Oct 2006 21:38:41 +0900] 送信者 : Tanaka Reisaburo 宛先 : atlas-japan ATLAS日本関係者さま、 先週CERNであったATLAS Overview Weekのプレナリーおよ び物理関係のセッションの報告です。LHC加速器は川本さんから、 Collaboration Boardについては岩崎さんから既に報告されています。 とても全体はカバー出来ないので、その他のセッションなど詳しくは以 下からトラペを参照して下さい。ソレノイドの報告をした山本氏や TGCの報告をした戸本君の勇姿を見たい方は、WEBレクチャーでどうぞ。 アジェンダ   http://indico.cern.ch/conferenceDisplay.py?confId=5633 WEBレクチャー http://esmane.physics.lsa.umich.edu/wlap-cwis/index.php ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 10月2日(月曜日)午後  Plenary ○ P.Jenni  全般に重要なマイルストーンは達成したが、現在ECT(Endcap Toroid)インテグレーション(全体のスケジュールに影響)、 ID/Endcap Muonインストール、カロリメーターの電源の遅れが問題になっ ている。今年秋にはバレルカロリメーターなどのコア検出器が、 2007年夏にATLAS検出器が動いていることがグローバルな目標。 予算は、この6月にCB会計グループで新たにCtC(Cost-to- Complete)4.4MCHFが必要とされたが、CERNが5MCHFを追加 貢献したのでこれでカバー出来る。各実験グループの spokespersonらからなるCRAG(Commissioning and Running Advisory Group)が9月1日に集まった。2008年は、1-3 月はオープンアクセス、4月1日にクローズ。最初の 14TeV衝突のターゲットは、2008年6月最後の週。9月 28日にCERNでColloquiumをしたS.Hawkingが ATLAS検出器を訪問した(添付写真参照、COBEに続き、Black Hole(and/or SUSY/Extra-dimension)でATLASもノーベル賞?)。 ○ 内部飛跡検出器  IDバレル(SCT+TRT)は、8月24日に地下に 降りた。物質量評価のため重量を正確に測定している。磁場測定、冷却 系のテストもOK。ECCは、SCT, TRTとも組み込み準備 OK。TRTは0.8%dead channelがあるが、SCTは全部の モジュールが生きている。ECCの地下への移動は来年1月 15日。ECAはまだテスト中、SCTで小さな修正が多数。 TRTとの合体は11月13日に延期。宇宙線テストの時間ない がノイズテストはやる。Pixelはすべてのモジュール/ Stavesを作った。Layer2完成(bad channel <0.3%), Layer1半分完成、b-layerは11月中旬。Pixel endcapは、ECAで12月まで宇宙線などシステムテストをやる。 ○ 液体アルゴンカロリメーター  バレルは、6月にLiq.Arをフィル。冷却温度88.4 +-0.2K, 酸素混入0.2ppmと非常に安定。 ショート箇所 を”burning"しようとしたがうまくいかなかったので7月 に再フィルした。全部で448セクターのうち、2セクターが HVショート、10セクターが半分だけ生きている。ECAは、 8-9月にfrontend electronicsをインストールしたが、LVPS(Low Voltage Power Supply)はまだ。ECAをこの秋から先にコミッショ ニングして、ECCは2007年に入ってから。宇宙線テストは 8月から、ECAは来年春。電源LVPS/HVPSにQ/A問題が ある。Tile CALとのテストで宇宙線見えている。 ○ タイルカロリメーター  LVPSが問題。1月にテストしたところ、 Overvoltageによりエレクトロニクスが故障した。ノイズやコントロー ル系も問題。LVPSタスクフォースを作ってQCを強化した。 SLACでLVPS boxをテストしている。BackendのROD/ ROSやDCSはコミッショニング・DAQで動いている。8 月にCTP+MDT+RPC+Tileで宇宙線テストした。 ○ マグネット  ソレノイドのコミッショニングについて山本氏が報告。7月 29日の大停電でもシステムは安全に保たれた。8月1日に 8kAフル励磁。クエンチテストもOK。磁場測定は10^-4Tの 精度、10^-5で再現可能。磁場測定の精度がよいので winding構造も見えた。LHC地下で初めて稼働した超伝導マグネッ ト(発表の後拍手があり、P.Jenniが感謝の言葉を述べた)。ト ロイドのfull loadに対するsagは28mm(wrt 30mm)と完璧。冷却は7月から5週間かけてテストし OK。バレルトロイドのテストは、この秋に3つのphase (<300A, 1-5kA, 5-20kA)で安全システム、slow/fast dump, quench heaterテストなどをやる。10月下旬にfull current 20,500A。ECT-AはAFT rodsなど修正箇所が出て数ヶ月の遅 れ。テストは来年2月、地下へは3月。ECT-Cは、 B191で2つのhalvesのアセンブリー開始。テストは、来年5-9月。 ○ ミューオン  BB5のバレルチェンバーのインテグレーションとテストは終了。 MDTは、HV/LVケーブルなどサービス関係のインストールが進行し ているが、RPCのサービスは遅れている。トロイドで磁場測定、 アラインメント、MDT、RPC/LVL1のテストをやる。 TGCは、Cサイドのwheelが完成(最初の P.JenniのトラペンにTGC1の美しい写真が2枚あっ た)。最終位置への移動とテストは、10月16日の 週。電源はCAENだが、供給問題のため2008年に1/4 しか入らないかも。   ○ エレクトロニクス  すべてのASIC, Frontend systemは生産終了し、コミッショニ ング中。Backend electronics(ROD)は、RPC RODに遅れ。 まだデザインしていてスケジュールがクリティカル。他の検出器の RODは生産中か生産終了。SCT以外の検出器のLV/HV PSが問 題となっている(!)。Liq.Ar LVPSは、カロリメーター近くの MDI製のDC-DC converterの問題は解決したとされていたが、まだ 信頼性に問題があるので長期テストをやっている。Wienerに特別 な開発を依頼してバックアッププランとする。Liq.Arの HVPSは、ISEG製のモジュールに様々な問題が見つかり、cap, diode, opto-couplerを交換したが、さらに暗電流の増加により disableにしたチャンネルに電圧がかかってしまう"running channel"問題が発生。代替案としてCAENにコンタクト。Pixel/ TRTのWiener製LVPSは、LHCの他の実験もCERN フレームコンタクトのため、デリバリーに遅れ。実験間で交渉してい る。すべてのMuonは、CAEN製LV/HV PSを使うが、 LHC他実験からも大量発注。年間5Mユーロ相当のPS生産能 力のところへ10Mユーロ分の発注を抱えている。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 10月5日(木曜日)午後  Data preparation ○ Data preparationタスクフォースがあり、オフラインデータ のクォーリティ、リコンストラクション、キャリブレーション、アライ ンメント、e/mu/jets、G4シミュレーションを統括。 Calibration Data Challenge(CDC)をやる。Data Quality Group (Rob Mac Pherson)やData Preparation Groupを作る。 ミスアライン、ミスキャリブレーションした検出器でシミュレーション (12.0.3、11-12月)して、リコンストラクション (12.0.4、12-1月)を行う。13.0.0は2007年2月以降。 ○ Liq.Ar EMではcell/clusterレベルでのキャリブレー ションの研究が進んでいる。Day0で2%のEMスケール の精度を目指す。Jet Energyでは、π0などのEMの 補正を入れたweight法とdead materialの補正を入れた研 究をやっている(分解能を良くするには、jet中のneutral particleのIDをすべしというのはよく知られている事実)。 12.0.3/12.0.4でこれらの補正が入る。SUSYなどで特に重 要なmissing ET分解能もW→eνなどを使って調べて いる。今後は、12.0.3からweightを入れたH1タイプ のJetキャリブレーション、out-of-cluster補正などをやる。 ○ IDアラインメントは、グローバルχ2法、ローカル χ2法、ロバスト法に加えて新しくKalmanスタイルが参入。 9月上旬にあったLHC Alignment WorkshopでのCDFからの助 言は、「違うアルゴリズムでも結果はほぼ一緒なのだから、アルゴリズ ムの追求よりは少ないマンパワーを集中して結果を出すべし。物理グ ループは待ってくれない。」だったのに。CTBのアラインメント さへいまだに出来ていないが、こんな調子でホントに自由度35k のシステムを本当にアラインメントできるのか? ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 10月6日(金曜日)午前中 LHC&Physics ○ Ian Hinchliffeが10月からPhysics Coordinator。Karl JakobsがDeputy。新物理コンビーナー は、SUSY D.Costanzo(Sheffield), HIGGS L.Fayard(Orsay), SM T.Lecompte (Argonne) , Top P.Ferrari(CERN), Exotic F. Ledroit (Grenoble)ら。 ○ Karl JacobsがATLFASTの現状について話した。フルシ ミュレーションを用いたチューニングが進んでいる。e/γは、 convertd, non-converted photonの区別をしない、bremssの効果 も入っていないことに注意。μは、pT, η依存性を入れた reconstruction効率が入っていない。τは、tau1p3p(track seeded )アルゴリズムを12.0.4で入れることが目標。bタグは、 IP2D, IP3D+SV1アルゴリズムでpT, η依存性を入れたパラメトラ イズにする。pT missに関して、full simulationでは TDRと一致するが、ATLFASTでは1TeV以上で全く合わなくな る問題がある。Karlは、constant termが効くからだと主 張していたが、そんなはずがないとDaniel Froidevauxが噛みつ いていた(真実は?)。これまでタスクフォースはCBNTでやって きたが、今後はATLFAST AODでチェックして欲しいとのこと。 ○ W質量測定について、TDRでは、ΔMW>25MeVだっ たが、これをZレプトンのスペクトルを用いてエネルギースケー ル不定性を15MeV→3MeV、Zラピディティー分布を用 いてPDF不定性を10MeV→1MeVなどして、全体で ΔMW<5MeV(per channel/experiment@10fb-1)にする超^2野 心的な話があった。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 文責:田中礼 P.S. おまけの写真は、ATLAS検出器を訪問したStephen Hawking。右はPeter JenniとFabiola Gianotti。 -------------------------------------------------------------------------------- Hawking.pdf Name: Hawking.pdf Type: APPLICATION/pdf