件名 : [atlas-japan:00729] Higgs WG Meeting 2004.09.01 送信日時 : 2004年 9月 3日 金曜日 0:27 AM 差出人 : Junichi Kanzaki 返信先 : atlas-japan@ml.post.kek.jp ミーティング報告を書くたびに前回の報告で何を書いたか見なおしているので すが、いつも同じような報告で新鮮味がなく申し訳ありませんが、、、今回も 今週、2004年9月1日(水)にCERNで行われた Higgs Working Group Meeting の 様子についてまた同様に、簡単に報告させて頂きます。 このような大きな実験グループでは「物理解析」と言っても全く自由にできる 訳ではない事は良くご承知の事と思います。もちろん個人的に「やってみる」 のは自由ですが、きちんと「公表」される解析は全く自由にできるませんし、 と言って自由な競争(そもそもそういった解析に簡単に優劣は付けられません) で決まる訳でもありません。それはもっと「組織的」に決められる訳で、つま りはかなり政治的に決まるものです(もちろんその解析の内容が全くのチョン ボでは話になりませんが、、、)。今回のミーティングを見ると明らかにその ための戦いがすでに始まっている事を痛感します。まして LHC の解析の目玉 の Higgs の解析でしたらなおさらです。 毎回、報告に書いていますが特に Wisconsin 大学のグループはその事情を良 く理解していて、毎回、若いスタッフによる多くの発表を行なっています。今 回も11の発表のうち7の発表が Wisconsin 大学のメンバーによるものでした。 考えても見れば当然で、例えば後になって彼らがやっている解析テーマと同じ 解析を行なって、たとえ多少こちらの解析が良い解析だったとしても、運が良 くて「では merge しましょう」、たいていは単に「ごくろうさま」となるの は明らかです。 2004年もかなり過ぎていますから今の予定ではビームの衝突まであと3年と少 しです。率直なところもう時間がないというのが正直な感想です。しかもやる べき事は Higgs の解析だけではないのですから。 話がかなりそれましたが、今回のミーティングも参加者は一時に比べ少ない方 でした。昨年は発表の数が多く二日もかかっていた事を考えると実験が近づい て来ているのに問題だと思います。そのためにミーティングの頻度を増やし、 毎回二日を予定としてとっているのですが、ここのところ二日間行なわれた事 はありません。これは私見ですが convenor が変わった後、現在の convenor が以前の convenor と違い Higgs working group の進むべき方向に対し、強 い initiative をとる事がなっくなってしまったせいである気がします。残っ たのが active な Wisconsin グループだけのように見えます(Sau Lan Wu氏の 思うつぼかも)。せっかくの DC2 のデータもそれを使って何をするべきかをもっ と具体的にリードするべきではないかと密かに思っています。 今回の11の発表のうち4つがτの解析に関係するものでした。それぞれ full simulation data を使った解析もありますが、必ずしもすべてがそうではあり ません。今は「猫もしゃくしも full simulation」なのかというと決してそう ではないのです。(ただ fast simulation を使うのであっても athena 環境で 解析するか、あるいは athena 環境で作られたものを使うというのは既に必須 だと私も思います。)我々からも良い物理のアイディアを含んだ full simulation data を使わない発表もまだ必要な気がします。 発表を聞いて感じるのは full simulation data を使った発表でもまだ validation の段階を出ていない、という事です。Full simulation data をこ れからどのように物理解析に結びつけるかという議論はまだまだ始まっていな い気がします。そのためにもより強い convenor の initiative が必要な気が しますが、、、 我々アトラス日本グループは昨年までの2年ほどは、特に学生さんの力を借り て多くの発表を行なう事が出来ました。そのおかげで Higgs working group 内でそれなりの認知度をもらえたと思っています。ゼロからスタートしたと考 えれば上出来だったでしょう。ただそれはその時の working group の解析の レベルが修士の学生さんの力でも対応できるものだったからです。今後、本番 に向けての解析を進めて行くにあたっては、現在の Wisconsin の解析体制を 見てもとても我々の今の体制で太刀打ちできるとは思えません。そのためには 特に若い研究者の方のより積極的な解析への参加がどうしても必要です。失 礼、”若くない研究者”がいらないと言っているのではないのですが、少なく ともより多くの時間とエネルギーが物理解析への参加に割けなければばならな いと思います。 ミーティングそのものの報告はほとんどなく「感想文」みたいなものになって しまい申し訳ありません。ミーティングでの発表そのものはあまりたいした事 はない気がしてます。ただこれからの我々をとりまく状況についての危機感の 方がより強く感じられたものでこのような文章になってしまいました。 参考:http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a043628 次回は10月に予定されていたのですが、11月3-5日の"3-day physics meeting" の予定と近いという事でキャンセルされてしまいました。この meeting が具 体的にどのような内容になるのかは今のところ詳細は不明ですが機会があれば 参加される事をお勧めします。 KEK 神前