件名 : [atlas-japan:00337] 報告 : WORKSHOP ON b / tau PHYSICS AT THE LHC 送信日時 : 2002年 6月 5日 水曜日 1:53 PM 差出人 : Junichi Kanzaki 宛先 : 皆様 5月27日(月)に CERN で行なわれた Higgs subgroup meeting に続き、30日(木) から Helsinki で開かれた b/tau workshop に参加してまいりました。この workshop は CMS の主催によるもので、b あるいは tau に関連する話題につ いていろいろ議論しようという趣旨のものです。私は、ATLAS の Higgs 解析 の状況について話すように、ということで行くことになったのですが、 workshop の全体のバランスとしては物理よりもう少し hardware との間の領 域の話題(Trigger であったり b/tau tagging efficiency の検討であったり) が多い workshop でした。CMS においては特に Si tracker の性能と物理との 関係が検討されていました。 会期は30日から6月1日(土)までの正味2.5日で参加人数は30人前後と言う小さ なものでした。会場となったのは Helsinki 大学が郊外に建設中のキャンパス にある新しい物理の建物で、最近建てられたばかりですのでたいへんきれいな 建物でした。私が滞在した足掛け4日間は大変天気が良く、心配していた気温 も昼間は20度を越えていました。ただ緯度が高いため夜は11時近くまで明るく、 また3時を過ぎると明るくなる上、昼と言わず夜と言わずどの時間帯でも町中 には人が歩いている、という不思議な町でした(彼らはいつ眠る?)。 物理の建物は最近建てられたので設備は充実しているようです。会場となった 部屋(大きな階段教室程度のもの)にはスライド用のスクリーンと並べてプロジェ クターの設備も整えられていて、どちらの presentation でも不足なく可能な 状態です(しかもそのような大きな部屋が一つではありません)。参加者が持ち 込んだノートPC のネットワーク接続もほとんどの皆さんは wireless LAN に よって行なっていたようです。 Workshop のプログラムは、最初の日に最近の SUSY Higgs についての理論側 の簡単な review と、午後は私が Higgs について、 Magali(元OPAL)が SUSY についての ATLAS のactivity を紹介した後、CMS の Higgs の study につい ての review がありました。ただ内容的には特別に新しい話題は取り上げられ ていなかったようです。理由としては一つには workshop 自体が物理よりも測 定器の実際の面に重点がおかれていたことと、またやはりグループ間をまたが る workshop では物理解析のあまり生々しい話題は出にくいことがあると感じ ました。 二日目には level-1 trigger、offline reconstruction、high-level trigger optimization、vertex reconstruction と b-jet tagging などの非常に基本 的で重要な話題が並びました。しかもどの study もかなり整備された Geant4 による simulation で行なえる体制が整えられているようです。ただ解析用の data structure はまだかなり N-tuple が使われているようでした。この一日 目、二日目それぞれの日の夕方の講演には cosmology とB-physics の最近の review がありました。最終日は半日で、全体の resolution および測定器の alignment が主なテーマになっていました。 一番最後の closing words では ・この workshop は b/tau と tracking 測定器についての series として ATLAS との間で続けていきたい ・今回は ATLAS の測定器サイドの発表がなかったのが残念だった とのコメントがありました。 良くご存知のように我々 LHC での物理にとって b-jet および tau の tagging には本質的に重要な役割があります。測定器を製作し、その性能を十 分に引き出して物理解析に役立てるため、このような workshop は小さいもの ですが大切な役目を果たすのではないかと感じました。もちろん相手の状態に ついての情報を得て、我々の検討作業の進行状態をチェックするにはうってつ けの workshop でもあります。次回がもし開かれた場合には ATLAS の測定器 の専門の方の多くの参加が望ましいと感じました。 プログラムのトラペなどは http://www.hip.fi/btau/program.html で見ることができます。 KEK 神前