件名 : [atlas-japan:00636] Higgs WG Meeting (Jan. 22, 2004)
送信日時 : 2004年 1月 23日 金曜日 8:37 AM
差出人 : 田中 礼三郎   宛先 :

アトラス日本関係者さま、 

昨日1月22日(木)に日本と同じくらい寒いCERNで行われたHiggs Working Group Meetingの様子です。 
ー 今回から約1.5ヶ月ごとに1回のミーティングとなった。 
ー 物理解析(1日)+ツール・議論(半日)の1.5日の会合とする。 
ー ビデオ会議VRVSによる中継をする。 
ー 次回会合は、2月下旬のATLAS Weekです。 

発表18つのうちWisconsinグループが7つ発表とまたもや席巻。WisconsinはSau-Lan Wuの明確な戦略により、 
    H→γγ (軽いHiggs) 
    VBF H→ττ (軽いHiggs、日本のお家芸) 
    VBF H→WW   (ピークで見えないがM_H=2M_Wで最も感度がある) 
    H→ZZ→4leptons 
とHiggsがどの質量にあっても、全部自分たちが発見出来るような解析をやっている。やっていないのは、S/Nが 
悪く解析が難しいttHとバックグラウンドが大きいWH/ZHのみ。マンパワーがあれば、日本も見習うべき戦略か? 

以下プロセスごとの簡単なまとめです。詳しい発表内容は、次を参照してください。 
http://agenda.cern.ch/fullAgenda.php?ida=a04133 

gg→H→eeee、eeμμ、μμμμ(発表4つ) 
◯ 電磁シャワーのエネルギー・スケールの較正やプレ・サンプラーでの補正の話。 
  較正はユーザーではなく、検出器グループが責任をもってやるべきものだと思うが。 
◯ WisconsinがMultivariate解析(Neural Net)で角度にはあまり情報がなく、M12とM34(Z,Z*の質量) 
  によりTDRに比べて20%良くなる、と報告。バックグラウンドは、QCD ZZ。比較的S/Nが良いこの 
  チャンネルならまだしも、WisconsinはいたるところでNLO MCを用いてNeural Netによる解析をした 
  と主張。広島の研究会でも指摘されたように、QCD MCは実験データと全く合わないのが普通なので、 
  MCを実験データでvalidationしない限り、信用できない解析だと思う。 

gg→H→γγ(発表3つ) 
◯ ResBosというNLO計算の話。K-factor(NLO/LO)=1.5(因にVBFは、K=1.04で小さく安定なのが良い)。 
  このチャンネルもqq,qg,gg→γγのMCに頼るのではなく、実際のデータを用いるべきチャンネル。 
  Tevatronで検証可能な良いテーマだと思うのですが。誰かやらないかな。 
◯ ここでもWisconsinがEMシャワーのシェープを用いたNeural Netでγ/ジェットの判別を27%良くしたと主張。 

VBF(Vector Boson Fusion) (発表3つ) 
◯ MC@NLOを用いたttバックグラウンドで評価。MC@NLOによるVBFは、今年出来る予定。 
◯ Wisconsinグループが、VBF H→WW→lνlνで125<M_H<300 GeVのHiggsを30fb-1で5σで発見可能と主張。 
  この質量領域では最も感度があるが、質量のピークでは見えないのが欠点。彼らが、アトラスのPublication  
  Committeeを通さずに勝手に発表したLHCでのHiggs探索のまとめの論文hep-ph/0401148(Les Houchesの報告) 
  に対して、物理コンビーナーを含めた数人から抗議があった。許されない行為だ。 
◯ 結果のまとめでは、ttHでは、H→bbチャンネルのみが使われている。日本グループは、citeしてもらえるように、 
  H→ττのアトラスノートを早く書くべし。 

τ-ID  (発表3つ) 
◯ 田中(純)氏が、VBF(H→ττ)でのフルシミュレーションを使ったτタグの話をした。TDRとほぼ同じ結果を得た。 
  低い運動量ではTDRより良い。いろいろ質問が出て盛り上がった。 
◯ τ-IDを取り仕切っているD.Cavalliらが、フルシミュレーションで1000を超えるRejection Factorを得た。効率は、45% 
        で固定。他の結果と比べて桁違いに良すぎる。質問が出たが、結局分母の定義の違い?? 
◯ WeizmannグループがATLFASTとフルシミュレーションでR_EM(Ptで重みをかけたΔR)分布が全く違っていると主張。 
  ATLFASTにどうやってフィードバックするのか、いろいろ議論が出たが結論なし。Pt依存性の考慮も必要だ。 

DC2チャレンジ (発表5つ) 
◯ Giacomo Polessello(物理コンビーナー)、Davide Costanzo(Validationチーフ)、Andrea Dell'Acqua(Simulation)ら 
  が発表した。 
◯ スケジュールは、2004年4−7月。目的は、コンピューティングTDRに向けたテスト、GEANT4、GRID、POOL、解析/ 
  キャリブレーション/リコンストラクション/シミュレーション/MCジェネレーターのテスト。今年のコンバインド・ビーム 
  テストの研究もやる。 
◯ Software validationのメーリングリストが出来た。atlas-phys-validation グループ。 
  Webページは、http://atlas.web.cern.ch/Atlas/GROUPS/PHYSICS/SOFT_VALID/soft_valid.html 
◯ 最初は、シングル・パーティクル、H→ZZ→4leptonsなどでテスト。物理グループから、DC2でテストしたいプロセスと 
  バックグラウンドの要望を出せ。 
◯ 全体の流れは、Davide Costanzo(LBL)によると、こんな感じ。 

以上、 田中 礼三郎