Date: Sun, 22 Jun 2003 07:27:28 +0900 (JST) From: Tomio Kobayashi   To: atlas-japan@ml.post.kek.jp Subject: [atlas-japan:00532] Report of CERN Council ATLAS-Jの皆様: 熱波が一段落して普通の夏に戻ったCERNからの報告をいたします。 小林 ______________________________ 理事会委員会(Committee of Council) 6月19日 9:30-11:00 ______ Observer国である日本が出席したのは、最初の議題のLHC Status Reportのみ。日本からは、佐藤(政府代表部)、織田(KEK)、小林(東大) が出席。 1)LHC加速器の現状(Lyn Evans) ・ATLAS実験ホールが完成した。6月4日に実験グループに引き渡された。 ・CMS実験ホールのシャフト(サービスホールへの縦穴)にヒビが発見 された。たいしたことはなさそうだが、現在これによる予定の遅れを 検討中。 ・ダイポールマグネットは、これまでに34台試験した。うち1台が クエンチが起こり8.33Tまで達成できなかった。その他はすべて良好 (17台はクエンチなしで、残りの16台も1〜2回のクエンチで8.33T まで達成した)。生産レートはこれから上げる計画であり、予定通り である。試験用のcold boxの遅れが一番問題。 ・四重極マグネットには多少問題があるが(corrector, SSS quadrupole) 、 全体計画には影響しない。 ・超伝導線は現在〜1/3が製造されている。これは当初の予定とギリギリ の予定のほぼ真中辺りであり、まだcontingencyがある。製造レートも 予定の値に達している。 ・功績のあったいくつかの会社に賞を出した(日本はIHI、古河など)。 2)LHC実験の準備状況(Roger Cashmore) ATLAS ・6月4日に実験ホールが引き渡され、UX15でinfrastructureの建設が 開始された。 ・バレルトロイドintegration-2(cold massを真空容器へ組み込む作業) が遅れている(5カ月)。原因は温度シールド製作の遅れ。 ・DMILLプロセスがなくなる影響をSCT, TRT, LArのrad. hard frontend エレクトロニクスが受けており、懸念される。 ・ATLAS建設費不足分(cost-to-completion)68MCHFのうち53MCHFが 集まる見通しとなった。 CMS ・シャフトのヒビのせいもあり、実験ホール建設が遅れている。 ・シリコントラッカーの量産に遅れあり(約5カ月)。 ・電磁カロリメータのクリスタルはこれまで〜25%納入されているが、 予定より遅れている。 ・CMS建設費不足分63MCHFのうち50MCHFが集まる見通しとなった。 ALICE ・TPC製作が遅れており、当初予定していた14カ月のpre-commissioning 時間を7カ月に短縮する。 LHCb ・RICH用のHPDのR&Dに遅れあり。 3)LHC Computing(Hans Hoffmann) ・LCG(LHC Computing Grid)の第1期計画が順調に進んでいる。LCG-1 グリッドサービスを今年の7月から開始する。LCG phase-1ではEDG (European DataGrid)や米国のVDT(Virtual Data Toolkit)のチーム とのjoint projectも進めている。 ・LCG phase-1の当初予算(2005年まで)は31.6MCHFだったが、これを saving/計画縮小などにより21.2MCHFにまで削減した。 ・今年5月にEGEE(Enabling Grids for E-science in Europe) proposal をEUに提出した。 ・Data Grid応用のためのCERN openlabにIBM, HP, Intel, Enersysの4企業 が参加した。 ___ 理事会(Council) 6月20日 9:30-12:30 ___ ・インドがobserver国となって初めてCouncilに出席 ・日本からは佐藤、織田、小林が出席 1)President's Report Council議長が前日のCommittee of Councilのclosed sessionで議論された 7月にロンドンで開催予定のfuture LCに関する会議について報告した。 この会議にはCouncil議長の出席を求められていたが、CERN所長も出席する ことに決定した。 2)スイスからの寄付について 6月4日のATLAS実験ホールinaugurationの席上、スイス大統領から「CERN 50周年記念(来年)の機会に"Palais de l'Equilibre"を寄付したい」 との申し出があった。これはSwiss Expo '02の時Neuchatelに作った pavilionで、4MCHFの移設費も併せて寄付される。これによりstage-1では visiter centreとして使用することを計画している。将来はaccelerator control centre(stage-2)や、更に予算が得られれば(特にスイスと 並んでもう1つのホスト国であるフランスからの寄与を期待している) executive meeting room(stage-3)を作ることも計画している。 3)LHC現状報告(Luciano Maiani) CERN所長による報告があったが、内容は前日のCommittee of Councilに おけるL.Evans, R.Cashmore, H.Hoffmannの報告をまとめたもの。結論 としては、「CERN managementは、昨年よりも強い確信を持って、 ・2006年までにLHC加速器建設完成 ・2007年春に最初のビーム ・2007年中頃に最初のビーム衝突 という予定を確認することができる。」 4)CERNの中・長期計画と予算(L.Maiani) ・中心計画はもちろんLHCであり、2003〜2010年の間の全予算のうち 50%が直接LHCに、30%が間接的にLHCに用いられる。 ・LHC以外の計画としては、重イオン、K0、COMPASS、反水素、中性子 実験などがある。2006年からはCNGS(CERN Neutrinos to Gran Sasso) がスタートする。ISOLDEも続ける。 ・加速器R&Dには、2004〜2007年の間に、3.8MCHF/年の物品費と6.4MCHF/年 の人件費を付ける。CLICのR&Dでは150MV/mを昨年11月に達成した。また マグネット位置を〜0.5nmで安定化した。 ・LHC加速器建設予算の予備費を140MCHFとっていたが、これから約20MCHF をcivil engineeringやquadrupoleなどへ投入する。一方、EIBC(European Investment Bank)からのローンの利子が予想より低くできたので25MCHF のsavingが得られた。その結果、現在のcontingencyは145MCHFである。 ・これまでもお願いしているが、LHC以外の研究計画やR&Dを最小限に押え ており、予算も厳しいので、是非追加予算をお願いしたい。 (以上)