KEK一般公開:2004年8月29日(日)

シンチレータを磨いて宇宙線を捕まえよう! (Version 4)
素粒子原子核研究所チームが案内するおもしろ物理教室

おもしろ物理に参加希望の方々へ
シンチレータを磨いて宇宙線を観測する作業(1)〜(5)は一般公開の日中に4回開かれます。 参加者は抽選で 選びます。抽選券配付時間は各回の30分前から10分間でその後直ちに抽選を行って参 加者を決めます。抽選券配布と抽選は、おもしろ物理会場のレクチャーホールの入り口で 行います。
作業時間定員 (抽選券配布時刻 → 抽選時刻)
第1回9:30〜 10:30 12名 (09:00〜09:10→09:15)
第2回11:00〜 12:0012名 (10:30〜10:40 → 10:45)
第3回13:30〜 14:3012名 (13:00〜13:10 → 13:15)
第4回15:00〜 16:0012名 (14:30〜14:40 →14:45)
見学は自由 です

実際にシンチレータ磨きをしない人でも、シンチレータ磨き から宇宙線の観測までの一つ一つの工程を目の前で見る事ができるように、会場がセット してあります。いつでもご見学ください。

夏休みの自由研究にいいよ!

  • 物質は何から出来ている?
    皆さんの体や回りにある物資をどんどん細かくしていくと、全ては 水素・炭素・酸素・銅・鉄などの原子から出来ていることがわかります。 その原子は原子核(陽子と中性子の集合)とその周りをまわる電子から出来ています。 陽子と中性子はそれぞれ3つのクォークから出来ています。 この研究所ではこれらの原子核やクォークやレプトン(電子やニュートリノ)など物質の 素(もと)の姿を研究しています。

  • 素粒子は大変小さい!
    でも、それらの原子核や素粒子はあまりに小さすぎて(1兆分の1cm以下)、どんなによい 虫メガネや電子顕微鏡を使って 拡大しても見えません。では一体、私たち研究者はどうやってそれらの粒子を研究してい るのでしょうか?

  • 素粒子を捕まえる道具の一つ:シンチレータ
    素粒子を「見る」道具の一つにシンチレータがあります。 写真1で青白く光っているものです。このプラスチックには 特殊な蛍光物質が含まれていて、電気を帯びた素粒子(たとえば電子)が通過するとかす かな青い光(シンチレーション光) を発します。

  • かすかな光を電気信号に変えるフォトマル
    でもこの青い光はあまりに弱すぎて人間の目では見えません。99年前の1905年に有名な アインシュタインは光が物質にあたると電子を たたき出すとという「光電効果」を発見しました(ちなみにアイン シュタインはこの発見でノーベル物理学賞を1921年に受賞しましたが、 彼をもっと有名にした相対性理論では受賞していません)。この光電効果を用いて 光を電気信号に変える道具が フォトマルチプライア(俗称フォトマル、光電子増倍管) で写真2がそれです。1本10万円くらいで買えます。

  • シンチレータを磨いて宇宙線を捕まえよ う!
    さあ、ちょっと他を見学する時間が犠牲になりますが、シンチレータ磨きににチャッレン ジしてみませんか?

    (1) 用意したシンチレータ板は機械で削りだしたものなので光が通りません。チャレンジ に参加した皆さんに このプラスチックの4辺をピカピカに磨いてもらって、内部で発生する シンチレータ光がよく反射したり通るようにします(写真3)。

    (2) 磨いたシンチレータとライトガイドーフォトマルをドッキングします(写真4)。 そして アルミフォイルで包んでから箱に入れ外から光が入らないように黒いテープで 包みます。

    (3) 研究者の人に助けてもらって高電圧(2000ボルト)をフォトマルにかけてもらい ます。フォトマルから出てくる信号をオシロスコープで確認します。

    (4) 出来上がったカウンターを重ねて、空から降ってくる宇宙線(電子やミュー粒子) が重ねたカウンターを同時に通過するのを観測します(図1)。1分間に1回くらい通過す るのが観測されれば成功です。

    (5) 観測が終わったら高電圧を切ってからカウンターを解体します。

    あなたが磨いたシンチレータはお土産に持って帰って 飾っておいていいですが、食べたり舐めたりしないでください。太陽の光にかざしたり蛍 光灯の近くに持っていくと青白く光ってきれいです。

    以下少し詳しい解説があります。

  • 解説1:シンチレータの原理
  • 解説2:光電効果とは?
  • 解説3:フォトマルチプライア(光電子増倍管)の原理
  • 解説4:宇宙線とは?

  • プラスチックシンチレータの応用例
    プラスチックシンチレータは放射線対して大変感度が高いので、原子力発電所や原子核や 素粒子の研究所、病院での放射線治療室などにおいて、放射線のレベルを測定して安全を 確保するための装置に使われています。会場にはそのような応用例として2台の 放射線レベルモニター装置を置きましたので、自分の手や足や 衣服の放射線レベルを測定してみてください。

  • 写真1:プラスチックシンチレータ :この4辺を磨きます。シンチレータはお持ち帰りできます。


    写真2:光を電気信号に変えるフォトマル


    写真3:プラスチックシンチレータ板の4辺をピカピカに磨き ます。


    写真4:カウンターを組み立てます。


    図1:カウンターを重ね(青色がシン チレータを示す)宇宙線が通過を観測します(拡大図)。


    解説1  シンチレータの原理

    電気を帯びた素粒子が有機物質(ポリスチレンなど)を通過すると、通過路のごく近くの 分子が振動します。 その振動エネルギーのごく一部(3%くらい)が光として分子から放出される現象をシンチ レーション現象と いいます。このようにして発生したシンチレーション光は紫外線なのでプラスチック中で は1ミクロンも 走ることができません。そこでプラスチックに蛍光物質を混ぜておくと、シンチレーショ ン光はそれらに 吸収されて青や緑の光が出てきます。これらの可視光はプラスチック中を長い距離走るこ とができるので、 フォトマルまで届くことが出来ます。プラスチックシンチレータを太陽光に照らすと青く 光るのは蛍光物質が紫外線を吸収して青い光を発光しているためです。

    解説2  光電効果とは?

    1905年に有名なアインシュタインは光が物質にあたると電子をたたき出すという「光電効 果」を発見しました。 この光電効果とは、光が金属の表面に当たったときに金属の中の電子がはじき出されて出 てくる現象のことです。 金属(とは限らずどの物質も)の中には電子がうようよ居ますが、みな負のエネルギーを 持っているので金属の 外には出てきません。しかしその負のエネルギー以上のエネルギーの光を照射すると、そ の光のエネルギーを 吸収して電子が表面から飛び出してきます(図2)。これが光電効果で飛び出した電子を光 電子と呼びます。 19世紀の終わりに物理学の世界では、光は波なのか粒子なのか大論争になりました。光電 効果の発見によって 光も粒子の性質を持つことがはっきりしました。光は粒子でもあり波でもあったのです。


    図2:光電効果(拡大図
    解説3  フォトマルチプライア(光電子増倍管)の原理

    フォトマルはPhotomultiplier Tubeの略で日本語では光電子増倍管と呼びます。いろいろ な光検出器の中で 最も感度がよく弱い光を電気信号に変える検出器です。ヘッドオン型のフォトマルは図3 のような構造を しています。微弱な光が左の窓を通過して光電面にあたると電子(光電子と呼ぶ)が放出 されます。 光電子は電気の力で加速かつ集束されながら第1ダイノード電極にぶつかり、その表面か ら二次電子を 2〜3個放出します。それらがまた加速され次のダイノードにぶつかりさらに多数の二次電 子を増幅します。 このような連鎖反応が起こって最後のアノード極には百万個もの電子が到達し大きな電気 信号が出てきます。 この様にフォトマルは、加速された電子が金属表面に当って多くの二次電子を出す現象を 使って微小な信号を 百万倍にもアンプ(増幅)するメカニズムを内蔵した装置です。小柴先生がノーベル物理 学賞を受賞された 神岡のニュートリノ実験でも、直径50cmフォトマルが1000本以上使われ、実験の成功の 基となったと言えます。


    図3:光電子増倍管(拡大図

    解説4  宇宙線とは?

    宇宙では超新星などから発射された高エネルギーの素粒子(電子・陽子・ガンマー線)が うようよ飛び回っています。それらが地球の大気圏に入ってくると、上空で空気の分子と 衝突して素粒子反応が起こり二次粒子 (パイ粒子など)が多く出来ます。それらの二次 粒子が空気分子と衝突しさらに多くの粒子が出てきます。 地上に着くまでは10回くらい の衝突が起こります。地上ではミュー粒子や電子などが宇宙線の主成分です。地上では 10cm×10cmの面積で上方からくる宇宙線は1秒間に1個くらいです。


    2004.8.13 by T. Kondo