件名 : [atlas-japan:00457] Higgs WG meetings 送信日時 : 2003年 2月 25日 火曜日 11:47 AM 差出人 : Junichi Kanzaki 宛先 : 皆様 先週、2月17日〜21日、の ATLAS week 中に行われた物理関係の meeting のうち、Higgs 物理関係の meeting の様子について報告させて頂きます。 最初に、今回の meeting には二つの特徴があったと思います。一つは convenor の変更の影響と、もう一つは Wisconsin の勢力拡大です。 まず、Higgs working group の convenor は二人のうち一人が Karl Jakobs 氏から Fabio Cerutti 氏に代わりました。Meeting 自身は、この2、3回は一 日午前午後通しで行われていましたが、 今回は水曜日の午後に物理関連の session が、また金曜日の午後に tool 関連の session が行われました。こ の tool の session では Fabio 自ら LEP 式の統計処理について熱く語って いました。また neural net についても Karl の時とは考えられない程 positive に扱われていました。これは Wisconsin の勢力が幅をきかせて来た こととも深く関係していると思います。我々、日本グループは Karl にかなり 好意的に扱ってもらって来たと思っていますが、今後はまったく異なる方針で 運営されていることは明らかで、かなり我々を囲む状況も変わって来ると思い ます。 また Wisconsin のグループが本格的に Higgs working group に参加して来た のは昨年の9月の meeting からだったと思います。それからほぼ半年ですが、 今回の meeting では Higgs working group の中心勢力に既になっていました。 中心は3人の「ポスドク」で、彼らはほぼ常時滞在で物理の study を行ってい るようで、それだけでも彼我の戦力の差を感じます。 Higgs WG meeting 2月19日(水)午後 http://documents.cern.ch/AGE/current/fullAgenda.php?ida=a0376 いくつかの talk を選んで紹介させて頂きます。 ・D.Rainwater: Understanding tt+jets backgrounds to Higgs searches Higgs の VBF production についての解析で有名になった Rainwater 君によ る background としての tt+jets の process についての talk です。主に P.S. MC と matrix element の融合についての提案です。尾高氏の MC meeting にもありましたように Wisconsin の Bruce (Mellado) 君もZ+jets あるいは VBF γγ の解析に同様の方法を用いているようです。実は我々もこ の前日に Rainwater 君と会って同じ話を聞いたところでした。 続いて片岡君(東大)、伊藤君(東大)の ttH process についての talk が続き ました。 ・Y.Kataoka: ME study on ttH -> bb channel この難しい(だが重要な) process の解析は Bonn のグループが先行している ため、片岡君は originality を出すのに大変苦労しています。それでも今回 は田中(礼)(岡山大)の提案によって南建屋グループの栗原氏の助けを借りた matrix element の値を用いる方法に挑戦しています。残念なことに今回の meeting には具体的な成果を報告するには至りませんでしたが、その方法と parton level でのいくつかの分布を示してその可能性を紹介しました。 Meeting 後、 Elzbieta (Richter-Was 氏)からもとても興味深いと言われまし たし、後日、Wisconsin のメンバーからも興味を持った旨の話を聞き、思って いたより以上に注目されたようです。 ・A.Ito: Final results of ttH -> tautau channel σ×Br が小さいため測定としては重要ではありますが、backgroun との関係 でやはり解析の難しい process です。伊藤君の発表も3回目(多分、、、)でそ ろそろ決着をつけなければなりません。今回は伊藤君の後に Israel のグルー プの発表もあり食い違いもあるようですので、本当に final にするためにも う少し作業が必要かも知れません。 ・B.Mellado: VBF H->gammagamma cut analysis Wisconsin のグループによる VBF γγ の結果の発表です。昨年9月からこの 解析をしている、という噂でありましたが、ようやく発表されました。皆川さ ん(筑波大)の解析の内容を十分に検討したようで slide にも多く引用されて いました。逆に皆川さんの解析の上にたって解析をしている分、double counting の検討、こちらで使っていない background を採り入れている、な ど進んでいる点もいくつか見られます。同じレベルまで到達して当然ですので、 こちらの対応も難しいところです。 Higgs WG: disussion on analysis tools 2月21日(金)午後 最初に Elzbieta が event genrator の概要を紹介していました。いくつか point がありますが、まず Herwig も Pythia と同様に用いて違いを評価せよ、 だと思います。我々の解析でも対応しなければいけません。 続いて個々の event generator についての発表が二つ。とくに AcerMC は Madgraph based のものでかなり多くの generator に対応しているようです。 いろいろの議論がありましたが、その中にできるだけ共通に作られた ntuple を使う、というものがありました。 その他には neural net の software の紹介、統計処理の方法についての talk 二つ、最後に MSSM parameter scan の software の紹介でした。 印象としては Karl が convenor だった時には考えられないような neural net に対する positive な対応でした。統計処理の方法についての強い拘りと 言いこれまでとはかなり風向きが違います。しかもそのどれもが Wisconsin のグループの得意とする分野です。今の段階でこれらの項目がそれほど重要と は思えないのですが、このように扱われるとある程度、対応していかなければ ならないのかも知れません。 以上、ごく簡単ではありますが二つのミーティングについて紹介させて頂きま した。ATLAS の中の Higgs 解析の動きは Wisconsin を中心にして大きく変わ り始めています。我々のグループの解析に対する体制を考えるに全ての面での 十分な対応をし、対等以上に活動して行くことは非常に難しいと考えます。最 終目標はもちろん本番での解析にあるわけですが、それさえも今からどのよう な体制を整えればなにが可能なのかについて考えておく必要があると感じまし た。 KEK 神前